毎日掃除できるだけのゴミがあるからね

県太郎です。

あっという間に一日が終わります。

 

ここ数日の僕の仕事鞄はパンパンで、重くて困っています。

中には先日落とした図書館の本がばらばらになったまま入っています。

それを職場に置いていく訳にはいかず、かといってこのまま棚に戻すのも後ろめたく

でも修繕する気持ちもありません。

僕には重くて仕方ありません。

悪いのは僕ですが。

 

大きな鞄を引きずるように帰ります。

帰りの電車の中はガラガラで居心地は最高です。

鞄を枕に横になります。

夕方のラジオはとてもお洒落な洋楽です。

お洒落すぎてこんな片田舎には似合わず、早々にスイッチを切りました。

 

寝過ごしました。一駅分です。

よく知らない駅、なんとなく降りてみようと思いました。

寝ぼけながらも慌てて駆けだします。

11月ですから当然寒いのですが、普段降りることのない駅は余計に寒く感じます。

貧乏性なので、歩いて帰りたいと思います。そこまで時間はかからないはずです。

駅から数十メートル歩くと公園があり、初老の女性が掃除をしていました。

ビニールや紙くずをゴミ袋に入れています。

初老の女性は初老らしくない動きでキビキビと掃除をしています。

ということは初老ではないのでしょうか。

なんとなく話しかけてみました。

「大変ですね、手伝いますよ」

怪訝そうに上げた顔は思った以上に若くてどちらかと言えば年配という顔立ちでした。

「ああ、いえ、大丈夫ですよ」

「毎日されてるんですか」

「…そうね、朝と夕方、毎日」

「朝と夕方ですか。それは大変じゃないですか」

「毎日だからもう慣れっこだけどね」

愛想笑いではありますが、にこりとほほ笑んでくれました。

僕は言いました。

「どうしてポイ捨てするんですかね、そんな人がいるって信じられませんよね」

「そうかな」

「どうして毎日掃除しているのですか」

「毎日掃除できるだけのゴミがあるからね」

「…そうですか」

どういうことか聞き返したかったのですが、やめました。

やんわりとその場を離れて早歩きで帰りました。

 

靴も鞄も投げ出して布団に横になりました。

胸の奥がザワザワしていました。

初老の女性が掃除をする理由は僕にはわかりませんし、あまりこのことを考えたくありませんでした。

そうこうしているうちに眠りに就いていました。

本は明日修繕したいと思います。

 

あ、初老ではなく年配でした。